日本版 WAIS-Ⅲとは
日本版 WAIS-Ⅲとは、知的活動をとらえるための成人知能検査です。対象者 は、16 〜 89 歳の、認知機能の低下や高次脳機能障害が疑われる患者、発達障害児(者)等となります。臨床心理士、作業療法士、言語聴覚士が主に評価を行います。
日本版 WAIS-Ⅲの特徴
・言語性知能と動作性(言葉を使わない)知能を個別に測定できます。 ・知能の測定以外にも意味記憶や作動記憶、注意機能をおおまかに評価することができます。 ・結果から、言語性 IQ、動作性 IQ、全検査 IQ と、4 種類の群指数(言語理解、知覚統合、作動記憶、処理速度)を算出することができます。 ・全体像を数値化することができ、詳細な内容を項目ごとに評価できるため、問題点が抽出しやすいというメリットがありますが、その反面、検査に時間がかかり(65 〜 95 分)、患者の疲労感が強くなってしまうといった特徴があります。
評価方法
WAIS-Ⅲには1 項目の下位検査があります。下位検査の結果をさまざまに組み合わせて、合計、比較、換算することで、知的活動の傾向をとらえることができます。
下位検査項目には、「1. 絵画完成」「2. 単語」「3. 符号」「4. 類似」「5. 積木模様」「6. 算数」「7. 行列推理」「8. 数唱」「9. 知識」「10. 絵画配列」「11. 理解」「12. 記号探し」「13. 語音整列」「14. 組合せ」があり、この順番に実施し、採点マニュアルに従って採点(粗点/図)します。患者の年齢別に粗点を評価点に換算する表があり、表に照らしあわせて評価点を算出します。下位検査項目の評価点は 1 〜19 まであり、平均は 10 とされています。
言語性評価点は下位検査項目「2. 単語」「4. 類似」「6. 算数」「8.数唱」「9. 知識」「11. 理解」の評価点を合計したものです。
動作性評価点は下位検査項目「1. 絵画完成」「3. 符号」「5. 積木模様」「7. 行列推理」「10.絵画配列」の評価点を合計したものです。
全検査評価点は、言語性評価点と動作性評価点の合計であり、計11の下位検査項目の評価点の合計となります。また 4 つの群指数があり、言語理解は「2. 単語」「4. 類似」「9. 知識」、知識統合は「1. 絵画完成」「5.積木模様」「7. 行列推理」、作動記憶は「6. 算数」「8. 数唱」「13. 語音整列」、処理速度は「3.符号」「12.記号探し」の評価点の合計となります。 それぞれの合計から、言語性 IQ、動作性 IQ、全検査IQ、群指数を算出します。
結果の解釈
IQ
IQ(言語性、動作性、全検査)の数値から、患者の知的活動の全体的把握ができます。
IQは90 〜 109 が平均とされ、70〜 79 が境界、80 〜 89 が平均の下、110 〜 119 が平均の上、120 以上は高いとされています。
言語性IQ と動作性 IQ を比較したり、群指数間の比較をすることができます。 ただし、IQは患者の全体像を数値化することはできますが、それ自体が訓練に必要なわけでなく、その下位検査項目の評価点や項目間の差をみることが重要となります。
また、言語性検査課題と動作性検査課題の下位検査項目の違いを評価することで、患者の認知機能の強いところと弱いところを知ることができます。