変形性関節症の概要
変形性関節症は、関節の変性と摩耗と増殖が混在する炎症性、進行性疾患です。原疾患が明らかでない一次性関節症と、基礎疾患に基づく二次性関節症があります。 変性した関節は骨組織が露呈して関節辺縁では骨が増殖 して関節変形をきたします。変形性股関節症では90%以上が二次性関節症で、その原因で多いものは先天性股関節脱臼、臼蓋形成不全などです。発症のビークは50歳代で、関節の運動制限と疼痛はしだいに強くなり、関節の機能障害をきたします。臨床症状を呈するのは膝関節が最も多く、股関節の頻度は高くありませんが機能障害が強く現れる特徴があります。
X線による病期分類
変形性股関節症の病期分類
病期
前股関節症
X線所見
自蓋形成不全、亜脱臼、骨頭変形、頸部前捻増強、頸体角の異常など先天的後天的変形はあるが、関節裂隙はほぼ正常で、骨硬化、嚢胞形成はみられない。
病期
初期股関節症
X線所見
関節裂隙のわずかな狭小化、関節面の不整合、臼蓋縁や骨頭に骨硬化像がみられ、骨棘形成はあっても軽度。
病期
進行期股関節症
X線所見
関節裂隙の明らかな狭小化、関節面の不整合、臼蓋縁部や骨頭の骨棘形成、臼蓋や骨頭の骨硬化、嚢胞形成が見られる。
病期
末期股関節症
X線所見
関節裂隙の消失、広範な骨硬化、嚢胞形成、著名な骨棘形成、臼底二十像が見られる。
変形性膝関節症の病期とグレー ド
grade1(初期)
骨硬化像または骨棘
grade2(中期)
関節裂隙の狭小化(3mm未満)
grade3(中期)
関節裂隙の閉鎖または亜脱自
grade4(末期)
荷重面の摩耗または欠損(5mm未満)
grade5(末期)
荷重面の摩耗または欠損(5mm以上)
機能障害の評価
身体計測
棘果長(SMD)、転子果長(TMD)、下肢の集計、BMI
整形外科的検査法
股関節
- X線像 → 頸体角、前捻角、CE角 、Sharp角
- 筋の短縮 → トーマステスト、オーバーテスト
- アライメント → アリステスト 、ローザーネトラン線
膝関節
- X線像 :FTA(femorotibial angle :膝 外側角、大腿脛骨角)
- 筋の短縮 → 尻上がり現象、SLR
- 関節動揺 → 外反ストレステス ト、内反ストレステス ト
- 関節水腫→ 膝蓋跳動
疼痛
運動開始時の痛みと長時間歩行後の痛みが特徴的となります。
関節可動域検査
- 変形性股関節症では伸展と外転内旋が制限される傾向にあります。
- 変形性膝関節症では屈曲拘縮と内反膝変形がよくみられます。
筋力検査
徒手筋力検査法では患部とその周辺関節をfree motlon testで運動痛が 著しい場合はbrake testで行うようにします。
跛行
・変形性股関節症でTrendelenburg跛行、Duchenne跛行が見られます。 ・股関節屈曲拘縮例では患側立脚期に腰椎前彎の増強がみられます。 ・変形性膝関節症ではthrust跛行がみられます。
活動制限・参加制約の評価
日常生活動作
- 起居移動動作はtimed up&go testで 簡便にみることができます。
- 変形性股関節症では立位動作、階段昇降、歩行能力、足趾の爪切りなどが制限される特徴があります。
- 変形性膝関節症では正座、階段昇降、歩行能力などが制限される特徴があります。
- トータル的なADL評価では、Barthel index、FIMを用いて評価します。
総合的評価
- 日本整形外科学会変形性股関節症治療成績判定基準は疼痛40点、可動域 20点、歩行能力20点、ADL20点の計100点満点で判定します。
- 日本整形外科学会変形性膝関節症治療成績判定基準は疼痛・歩行能30点、疼痛・階段昇降能25点、可動域35点、腫張10点の計100点満点で判定します。