はじめに
人は、社会生活を送る中で無意識のうちに相手の気持ちを感じ取りながら、お互いなるべく心地よく接することが出来るように折り合いをつけてコミュニケーションを取っています。
なにか納得がいかなかったり怒りを覚えた時にも、急に怒鳴ったり泣き叫んだりはしません。
こういった時に感情のコントロールが出来無くなるような症状が感情コントロールの低下の一例です。
感情コントロール低下の症状
普通に話をしている最中、急に喚いたり怒鳴りちらしたりというように、感情のコントロールが難しくなるようなことがあります。
小さなことでもすぐにキレる、イライラして怒鳴り散らす、ちょっとしたことですぐに泣く…というようなことが正常の範囲を超えて起こってきます。
怒りやすくなっている状態を易怒性、泣きやすくなっている状態を感情失禁というように言います。
元々怒りっぽい人や泣き上戸の人などもいますので、どこからどこまでが正常範囲か…というと難しいところもあるかと思いますが、その人の発症前後で比較した時、明らかにそういった感情の抑制が効かない状態がひどくなっていると思ったらそれは高次脳機能障害によるところが大きいでしょう。
こういった症状は、社会生活に大きく影響を及ぼします。他者とのコミュニケーションもうまくいかなくなりやすいです。
家族との共同生活が難しくなったり、大きな事件に発展してしまったということもあったり、生活を脅かす原因となるような事件を起こしかねません。
感情コントロール低下の方に対する対応のポイント
対応方法は大きく分けて2つです。
本人がどう対処していくか行動を管理していく仕方を学習する方法と、周囲が環境や対応方法を整えていく方法です。
しかしながら、本人が感情コントロールが出来ていないというような自覚がないことも多く、自身での管理が難しいことも多いです。
こういった時には、後者で対応するしかありません。無理やり押し付けたりするような方法は逆効果なので避けるようにしてください。
本人の対応ポイント
自身の感情コントロールが出来ていない…ということに対して自覚があるならば、少しずつ本人が対応していくことが出来ます。
原因となる事象から離れる
イラッとするようなことが起こったら、その場から席を外したり、見ないようにしたりして、できるだけその対象から離れるようにします。
イラッとするような怒りを自覚することが出来れば、自身が感情を爆発させる前に抑制する何かを実行することが出来ます。
気分を切り替えるきっかけを決める
感情が爆発しそうになった時には、手を握りしめる、お守りを見る…など、なにか感情を表に出さないように意識をそらすようなきっかけを持っておくと便利です。
この間に気持ちを整え、また人とコミュニケーションが取れるようにクールダウンすることが出来ることもありますので、何かのきっかけを考えておくと良いですね。
楽しいテーマを考えておく
自身が好きなものや好きなこと等、イライラしてきたら考えて、気持ちを切り替えるようにしておきましょう。
イライラしてきた時には、そういった楽しいことを考えて気持ちを落ち着かせるのもひとつの手です。
周囲の対応ポイント
感情コントロールが難しい人に対して、周囲がどう対応すべきかをチェックしていきます。
約束を守らせる
本人と相談し、約束事を決めていきましょう。その約束は、必ず目に見えるようなかたちで残してください。
知らなかった、分からなかった…ということがないように、周囲の人が一方的に決めることはないようにしてください。
必ず本人に理解してもらった上での約束にしてください。
そういった約束が守れたかどうかの振り返りも必ず行うようにしましょう。
『トラブルを起こした時には必ず謝る』というような項目を入れ、それを守らせることで少しずつ社会の中でも活動しやすくなっていくでしょう。
原因となる因子から引き離す
問題が起こった時に、いつまでもそれに対応しようとせずその場から離れさせることも有効です。
自身ではコントロールできなくなっているため、周囲の人がさり気なく原因から引き離すように促すことが大切です。
話題や場所を変え、その問題に向き合う時間を極力減らすようにさせてください。
フィードバックする
何か問題が起こった時にはそれをきちんと振り返ることも大切です。
どうして怒ったのか、どうしてすぐに喚いたのか…などということを丁寧に振り返り、どうすべきだったのかを一緒に考えます。
一呼吸置く、水を飲む、実際にトラブルが起こってしまったのならば謝る…などといった対応がピックアップされるかと思います。
しかし、こうして思い出すことにより、怒りが再燃するようなケースもありますので要注意です。
本人の様子を見ながら行動を振り返り、次につながるような対応方法を一緒に考えていきましょう。
反社会的な行動の制限
当たり前のことですが、社会的に間違った行為は最初にしっかりと理解しておく必要があります。
例えば、怒りが爆発して相手を殴った…などというような暴行事件にならないようにしましょう。
良いところは褒めるようにする
悪いところだけでなく、良かったことに対しても見ていきましょう。イライラした様子を自分で対処できた時には、褒めてあげることも大切です。
こうした感情のコントロールが難しくなったのも、後遺症のせいだということを本人にも伝え、自分自身の行動がうまくいかないことを過度に責めないようにしてあげることも必要です。
まとめ
感情のコントロールが難しくなると、本人だけでなく周囲も翻弄されがちです。怒りの琴線に触れないように注意し、なるべくそういった状況にならないようにしていくこともポイントです。そうでないと、本人も辛い状況ではありますが、周囲は更に振り回されることになります。
本人があまりに過激に感情を爆発させる頻度が増えると、周囲も対応しきれず疲れてしまいます。
長く支えていくためにはそういったポイントを押さえていくことが必須です。周りの人が疲弊しないために、ストレスを発散できるような場を作っておくことも必要でしょう。