水飲みテスト

水飲みテストは、摂食・嚥下障害の疑いのある患者に対して行う嚥下スクリーニングテストの一つです。口への取り込み、送り込み、誤嚥の有無などを判定するために行います。 言語聴覚士、看護師、医師が主に評価を行います。 水飲みテストはベッドサイドでも簡便に行える検査であり、本邦でも多く利用されています。

評価方法

1.水飲みテスト

常温の水 30mL を入れたコップとストップウォッチを用意します。 手順は、座位の患者にコップを手渡し、「この水をいつものように飲んでください」と指示します。水を飲み終わるまでの時間や何回で飲むことができたか、飲んでいる最中の様子を観察し、5 段階で評価します。

水飲みテストプロフィール(窪田らの方法)

  • 段階1:1 回でむせることなく飲むことができる
  • 段階2:2 回以上に分けるが、むせることなく飲むことができる
  • 段階3:1 回で飲むことができるが、むせることがある
  • 段階4:2 回以上に分けて飲むにもかかわらず、むせることがある
  • 段階5:むせることがしばしばで、全量飲むことが困難である

30mL の水を飲み終わるまでの時間や、何回で飲むことができたか、飲んでいる最中の様子を観察し、5 段階で評価する。

水飲みテストプロフィール(窪田らの方法)の判定

プロフィール1 で 5 秒以内であれば正常範囲、段階1で 5 秒以上もしくは段階2は嚥下障害疑い、段階3〜 5 は異常となっています。

飲んでいる最中の様子がすするような飲み方でだったり、口に含むような飲み方、口唇からの水の流出、むせながらも無理に続けようとする傾向、注意深い飲み方をするなどの所見も重要です。 水飲みテストは、本邦では窪田らが 1982 年に報告した 30mL の水分を用いた方法 が頻用されてきました。 水飲みテストの判定に関する感度や特異度は明らかではなく、また多量の水を誤嚥する可能性が高いため、最近では 3mL の水を用いた改訂水飲みテスト(MWST;Modified water swallowing test)を行います。これで異常がなければ、より負荷の大きい水飲みテストを行うことが多いです。

2.改訂水飲みテスト(MWST)

改訂水飲みテストは、3mLの冷水を嚥下させて嚥下機能を評価を行う、標準化されたスクリーニングテストです。

検者はシリンジで冷水 3mL を計量します。そして冷水を注ぐために利き手でシリンジを持ち、嚥下反射を確認するため、非利き手の指腹を舌骨・甲状軟骨上に置きます。

シリンジで冷水 3mL を口腔底(舌の下)にゆっくり注ぎ、口唇を閉じた後に嚥下を指示します。

口腔内に水分を入れる際、咽頭に直接流れ込むのを防ぐため、舌背には注がず、必ず口腔底に注ぐように注意する必要があります。

嚥下を触診で確認し、さらに、むせの有無を確認します。

加えて、嚥下が起こった後、「あー」などと発声させ湿性嗄声の有無を確認します。

むせ、湿性嗄声がなければ、追加で 2 回唾液を飲んでもらい、5 段階評価を行います。

改訂水飲みテスト(MWST)プロフィール

  • 1:嚥下なし、むせる and/or 呼吸切迫
  • 2:嚥下あり、呼吸切迫(Silent aspiration の疑い)
  • 3:嚥下あり、呼吸良好、むせる and/or 湿性嗄声
  • 4:嚥下あり、呼吸良好、むせない
  • 5:4 に加え、反復嚥下が 30 秒以内に 2 回可能

改訂水飲みテスト(MWST)の判定

 

口腔内に投与した冷水のほとんどを吐き出してしまったり、口腔内に冷水を投与したにもかかわらず何も反応が得られない場合は、判定不能とします(顔面神経麻痺などで、口唇からの少量の漏れなどを認めた場合は施行者の判断とします)。 評価点が 4 点以上であれば最大で 2回繰り返し、合計 3 回施行し、最も悪い評価を採用します。上手く嚥下できた場合に繰り返して行うことは重要なポイントで、偶然うまく飲み込めた場合を除外する必要があるために行います。

3 点以下を異常とした場合の誤嚥の感度は 0.70、特異度は0.88 と報告されています

水は嚥下しにくい食物ですが、そのぶん誤嚥を検出しやすい検査です。

検査前に口腔ケアを十分に行った後であれば、たとえ誤嚥しても誤嚥性肺炎などのリスクは比較的小さいといわれています。

しかし初めから 30mL の水分で評価すると、多量誤嚥の危険性があるため、評価開始時には改訂水飲みテストを使用します水飲みテストはあくまでスクリーニング検査なので、これのみで嚥下機能を評価するのは危険です。水飲みテストでは不顕性誤嚥を検出することができないため、詳細な病歴、身体所見を確認し、ほ かのスクリーニング(RSST や咳テスト)の結果と照らし合わせて、必要であれば嚥下造影検査(VF;videofluoroscopy)や嚥下内視鏡検査(VE;videoendoscopy)を行える施設であれば、実施するべきです。

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