通過症候群(durchgangssyndrom)とは?症状と対応方法を解説!

はじめに

通過症候群とは、1956年にヴィークによって提唱された概念で、意識障害のひとつです。
脳障害の急性期から慢性期に移行していく際に一時的に起こる精神の変調症状です。
意識水準の低下やせん妄などに分類するほどではないけれど、全般的な精神機能の低下、抑うつ、感情鈍麻、意欲低下、幻覚妄想、興奮、攻撃性などがみられます。
意識障害(いわゆる意識水準の低下)がないことが定義としてあげられますが、その病態は意識の質に問題があるというように考えられています。

通過症候群の症状

軽いものならば、抑うつ状態、自発性低下などの症状が現れることがあります。
気分が上がらずうつっぽくなってしまうため、自分から何かをしようという気が起こらないというような症状が起こります。
軽い認知機能障害を示すこともあります。
これらの症状はうつ病と勘違いされることもありますが、睡眠と覚醒の間で意識がはっきりしないことによって起こってくる症状なため、経過とともに変化することが多いです。

中等度の通過症候群になると、記憶障害や思考障害、感情障害、パーソナリティ障害、自発性欠如などを呈することがあります。
意識がはっきりしないため、覚えられない、考えられない、妄想や幻覚のために感情がおさえられない…などというような状態です。
せん妄とよく似た症状を呈します。

重度の通過症候群は、健忘症候群、もうろう状態、重度の自発性欠如や発動性低下を示します。
健忘症候群には、アルコール依存や低栄養によっておこるウェルニッケ-コルサコフ症候群によるものも含みます。

これらの通過症候群は、意識障害によっておこる症状ではありますが、病状の経過に伴って回復したり症状が変化していくものです。
また、もともと精神的な問題がなかったかの聞き取りも大切になります。
本人だけならず、家族や身近な人にも確認し、もともとそういった問題がなかったかどうかの確認は必ず必要です。
通過症候群は、あくまで一時的な症状であり、長期にわたり同じ症状が継続することはありません。
診断をする際には、その経過を見ていく必要があります。
ある程度の日数を経て症状が変化していくことを見極めていかなければならないのです。
せん妄と考えるには長すぎる精神変調があったり、日内変動や日間変動があまり見られず上述のような症状が現れ、結果としてそれらが消失したりした場合に通過症候群であったと診断されることが多々あります。
結果的に、症状が消失すればそれでいいのですが、時に認知症のような症状が残ってしまったり、半年以上の月日を要することもあります。

通過症候群の対応方法

もともと脳などの中枢神経系に器質的な損傷が起こって現れた症状なので、そちらの治療が第一優先になります。
しかしながら、日常生活リズムを整えたり、うつや不安、幻覚や妄想などが強い場合には、向精神薬が処方されることによって落ち着くこともあります。
また、精神的な不安がそういった症状を増長させていることもあるので、不安を煽るような因子はなるべく取り除くようにしましょう。

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