高次脳機能障害で独善的な処罰感情が強くなった場合の対応方法

はじめに

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社会の中で生きていくためには、ある程度の秩序を保っていかなければなりません。様々なルールを守っていくことで、その中で初めて他者との良好な関係が保つことが出来ます。

当たり前の一般常識を守れない人とはなかなかうまくやれないでしょうし、一歩引いてしまうことでしょう。そのような人と出会った時には、トラブルを解決してもらえそうな人、例えば警察や警備員など、その場をおさめてくれそうな人に頼むのが適切な判断でしょう。

それは、直接対峙することでトラブルを生む可能性があるからです。
当たり前のルールを守れない人に直接的に関わっても、受け入れられないことが多く、それ以上のトラブルを巻き起こしかねません。

しかし、脳血管障害によって、トラブルは極力避けるような対処方法よりも、自ら動こうとしてしまうような行動に出ることがあります。このような行き過ぎた正義感をもつような行動を『独善的な処罰感情』といいます。

独善的な処罰感情とは

間違った行動をしている人を許せないで、それこそ独善的な態度で相手を処罰しようと動いてしまうことを『独善的な処罰感情』と言います。

通常ならば警察などに対応してもらうことが適切な場面でも、自分から動こうとし、逆に大きなトラブルを引き起こしてしまうような事態となってしまいます。

そういった行動が大きな問題になったとしても、本人は悪いことをしたと思っていないため、自分のしたことを反省することもなく、逆に正しいことをしたと主張します。

こういった正しい判断が出来なくなった状況も、高次脳機能障害によるものです。様々な症状が絡み合ってこのような独善的な状態を作り出していると考えられます。

一旦悪いと思ったことがあると一直線にそれに対して向かってしまうような注意障害や、物事を柔軟に考えることが難しくなっているような判断力の低下などにより、ルールやマナーを違反している人がいると、違反者の行動から他のものに注意を向けたり、自身がすべき適切な行動を判断することが難しくなります。

また、自分の独善的な行動によって起こることを見通すことが出来なくなるような遂行機能障害により、後先を考えない、場当たり的な行動しか出来なくなります。

それらは時には暴言や暴力となり、大きな事件になってしまうことも多々あります。

そして、一番大きな問題としては、こういった自分自身の独善的な行動は良くないという認識がない病識の欠如が挙げられます。

自身の行動の非は認めず、正しいことをしたと思い込んでいるために反省するようなこともなく、再度同じことを繰り返したりしてしまうのです。

独善的な処罰感情への対応ポイント

自分自身の行動は正しい…という認識があるため、それらを主張されると周囲は大きく言えなくなってしまいがちです。そのため、まずは自身の不利益につながるような行動について説明していくことから始めましょう。

暴力は自分自身に不利益になるということを理解してもらうことがまずは必要です。周囲の人は、常にこういった態度で接することが大切です。また、行動パターンを掌握することで避けることも出来ます。

トラブルが起こりそうな場所(人混みや飲み屋街等)には極力いかないということで回避したり、第三者を介して注意を促したりするような支援を受けたりすることなどが考えられます。

そのように、トラブルが起こりそうな場面を回避することで一時的に治まっていたとしても、ふとしたきっかけでまた現れることもあるので注意が必要です。

毎日同じ肯定的な声掛け(例えば『今日も何もなくてよかったね』などというような声掛け)をして、トラブルを避けられているという刷り込みが出来てくると、こういった症状の抑制に繋がったという報告もあるので有効なこともあります。

まとめ

独善的な処罰感情を持っている人は、様々な高次脳機能障害が絡み合って、自身の考えが絶対的に正しく、自分の行動はすべて間違いがない…と思っている状態にあります。

確かに、正しいことを言っているのかもしれませんが、その行動は問題をより大きくしかねない事が多いです。
病識の欠如を持ち合わせていることも多いため、なかなか本人のしていることは自身の不利益になるということを理解してもらいにくいかもしれませんが、それが正義の行動だとしても社会的に許されないこともあるので、最低限暴力などの行動は抑制できるように対処する必要があります。

いくら正しくても、特に暴力は自分に不利益が生じるということを説明し、認識してもらうように促していくことが大切です。

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