高次脳機能障害による人格機能の低下(依存性・退行)と対応方法



はじめに

Pexels / Pixabay

依存性・退行とは、まるで小さな子供の頃に戻ってしまったような振る舞いや思考の状態のことです。以前と比べ、人格が変わったかのように感じられるほど、人を必要以上に頼ったり、低年齢化したように客観的に見えるようになります。これらも高次脳機能障害のひとつです。

依存性・退行の症状

子供と対等にけんかをしてしまう、小さなことでも判断が自分では出来ずに人に任せようとする、外出は1人でできるのに自宅ではなんでも身近な誰かに頼んでくる、1人で寝られない…などといった様子がみられるようになります。

このように、現在の年齢相応の行動が出来なくなった状態を、依存性や退行と言います。そういった違和感に関して、なんとなくですが本人が自覚していることもあります。人のいないところでは、親や配偶者につきっきりになってもらいたいのに、外では普通に振る舞おうとしている様子が見られることもあります。内と外の使い分けが出来ているパターンの場合、身近な人以外からは客観的にあまり大きな違和感を感じにくいこともあります。

依存性・退行に対する対応ポイント

依存性や退行のような症状を呈する場合、物事に対して不安が大きくなっていることがよくあります。まずはその不安の原因となることを、こちらが察して取り除いてあげるようにしましょう。


発動性の低下により依存している状態の場合は、生活リズムを整えてあげることを第一の目標にしましょう。
何か決まった動作をするにあたり、きっかけとなる目印や合図を出してあげるようにし、それを習慣化することで出来るようになることがあります。

自分は何も出来ない…というような感情をなるべく持たせないこともポイントです。出来ないということに対し、励ましすぎるのも逆効果なので、注意しましょう。困難なことに対しては、一緒に考える、何かきっかけを探す、ヒントを与えながら自分で考えさせる、考えた内容について一緒にまた検討する…などというように順序立てて問題を解決していくようにしてください。

やるべきことを書いた手順書やメモなどの活用、万が一の時にはすぐにヘルプを出せるように携帯を常に所持するようにしたり、誰かに助けを求められるようなカードなどを持っておくと精神的に少し余裕が出るでしょう。

また、自身が年齢相応の振る舞いが出来ていないということに気付かせてあげることも大切です。社会の中での立ち位置がどのようなものなのかを認識させ、自身の行動を振り返るようにしましょう。まわりに知らない人が多いと、本人も頑張って普通に振る舞おうとすることも多いので、他人に触れる時間がある程度あることがリハビリにもなります。

出来ないことを避けたり、過剰にやらせすぎたり、手伝いすぎたり、強く叱ったりすることは、依存性や退行を助長しかねないため、避けるようにしてください。

家庭内でありがちな症状と対処方法

● 小さな子供と些細な事で喧嘩をする

→大人だということを認識させ、大人としてのあり方をさりげなく伝えてあげるようにしましょう。

本人の自尊心を傷つけない程度に促すのがポイントです。

● 当たり前に出来ることでも頼ってこようとする

→自身でもできることを分かってもらうために、最初は傍で確認してあげながらやってみましょう。

手順などが分かったら、少しずつ声掛けの頻度を減らしたり、離れたところでみたりしながら自分だけで出来るということに気付いてもらえるようにしていきましょう。

職場でありがちな症状と対処方法

新しい仕事を任された時など、今までならば簡単にこなしていたことでも突如として出来るかどうか心配になり、一歩が踏み出せなかったりすることがあります。

準備はできていても、いざ本番になると人に任せようとしたりということもあります。
そういった時は、出来るかどうか不安になっている状況なので、まずは出来ているということを認識してもらわなければいけません。

手順書やスケジュール帳なども活用し、盛り立てたり褒めたりしながら安心させ、その仕事に対して自信を持ってもらえるようにしましょう。

成功体験を繰り返すうちに自身をつけて徐々に独りでできるようにしていきましょう。

学校でありがちな症状と対処方法

子供同士だからこそ、こういった症状に対しての対応はより難しくなるのが学校での生活です。
学校にいる最中、友達にずっとついて回ったり…というように、友達との距離感が近くなりすぎやすいため注意が必要です。
本人の行動が行き過ぎていることを客観的に伝えて気付かせてあげる必要があります。

簡単なことからでもいいので、本人に学校内での役割を持たせてあげることで、それに意識を向かせる時間を作ることも有効です。
自分でもできること、自分ひとりでは難しいことを見極め、出来ることに関しては少しずつでいいので1人でやってみるように促してください。

また、自身の時間を楽しめる時間を考えてあげることもひとつの方法です。

同様の症状を呈した人達の会なども地域にあることがあるので、そこへ参加したりして客観的に自己分析をするのも効果的です。

公共の場面でありがちな症状と対処方法

入院中、時間が空いて暇な時に看護師をすぐに捕まえて話し続けたり、消灯時間になっても傍にいてくれと頼んだり…というような様子も、依存性・退行の一例だといえます。

対処方法としては、空き時間になった時に、一人でもなにかにとりくめるような課題を時間と場所を決めてやってもらうようにします。

無理のない範囲ですが、なるべくリハビリの個別訓練や自己学習などの予定を入れるようにし、生活にメリハリを付けるようにしましょう。

同じような疾患の方と同室にし、周囲もそういった課題に取り組んでいるような環境を作り、自身もやらなければというような意識をもたせるような雰囲気作りをしていきましょう。

まとめ

高次脳機能障害による依存性・退行は、社会活動を妨げる一因となりやすい症状です。

対応を間違えると、本人の自尊心を傷つけ、引きこもらせてしまうようなことになりやすいので、十分注意して対処してください。

ポイントは、本人が自身で出来るような雰囲気になるように促したり環境を調整したりすることです。

少しずつ出来ることを認識してもらえるようにやっていきましょう。


シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。