はじめに
正常な人でも、何かに固執することはあります。
自分の好きなことや思い出の品など、絶対に手放したくないものはあるでしょう。
しかし、高次脳機能障害で起こってくる固執はもっと病的です。
日常の些細なことにもこだわり、周囲の人々にも影響を及ぼします。
固執の症状
何かを始めると、それに意識が集中し、周囲へ全く注意が払えなくなります。
強く静止されるまで続けたり、状況に応じて臨機応変な対応ができないため、延々と同じことを繰り返してしまいます。このような状況が『固執』です。
その人にとっては、手順が確立しておりその順番通りに行うものとして習慣化されていることに関してはうまく過ごせますが、新しい事柄に対しての対応力が低いです。
初めてのことに対しては、視野が狭まり一部分だけしか見つめられなくなります。
そして、そこに集中しすぎてしまうため、周囲からは固執しているというような状況に見られます。
他の事柄への切り替えも難しく、同じことを何度も何度も繰り返してしまいます。
こういった何かへの執着が著しくなる状況を固執といいます。
固執への対応ポイント
一度固執しだすと、そこから修正するのはかなり難しいため、ルーティーン化されていない事柄を始める時には必ず注意して対応してください。
回数や時間を短縮する
いきなり動作を止めるのではなく、少しずつ固執した行為への時間や回数を短縮していくようにしましょう。
合図を出す
何かを行っている時には、アラームやタイマーなどでいいので、終了の合図を出してあげましょう。
この音が鳴ったら終了…というように、合図を認識してもらうことが大切です。
固執している事象を先送りにする
固執している事柄自体を少し先送りにしたり、時間を決めて終了させるようにします。何か他のことをして気持ちを切り替えたりするのもいいでしょう。
今はこれをする時ではないということを理解してもらい、一旦それから手を引くようにします。
専門の医療機関に相談
こういった固執の症状は、不安障害や強迫性障害などの精神疾患がベースにあることもあります。その際には、環境調整や投薬などが必要になることもありますので、専門の医療機関を受診して相談することも必要となります。
職場での対処方法
ひとつのことに対して、同じような質問を繰り返したり、何かを始めるとまわりが制止するまで延々とやってしまうというような症状が現れることがあります。
まずは、最初に質問をしても良い回数や時間を決めてから仕事を始めることで、質問を何度もするという事態を少しでも軽減することが出来ます。
何か新しい仕事を始めた時には、何らかの合図などを決めておき、一定の時間や仕事量が済んだら一度休憩を入れるというようにしてみてください。
学校での対処方法
この問題を解くと決めたらそれが終わるまで次のことが出来ないため、休憩時間や次の授業が始まっても続けてしまうことがあります。
切り替えのための合図(チャイムやアラームなど)を決めておき、これがなったら必ず手を止める、帰宅後にやる、次の授業の準備をする…などとあらかじめ決めておくようにしましょう。
家庭での対処方法
少しでも服が汚れたら即着替えてシャツ一枚でも洗濯機を回したり、少しの汚れが気になり一日に何度も同じところを拭いたりするような行動をすることがあります。
家事の中でも、『洗濯機を使うのは朝』『拭き掃除は一日朝に1回』…などというような家庭内でのルールを決めて、それにそって動いてもらうようにしておくのがポイントです。
本人が納得したルールでないといけないので、よく話し合い、妥協出来るポイントを見つけてルールを選定してください。
公共の場での対処方法
こういった固執は公共の場面でもよく見られます。いつも同じ電車の車両の定位置に乗れずにイライラを撒き散らしたり、ほんの少しだけ時間が遅れたバスの運転手へ怒ったり…というようなことがあります。
公共の場へ出ると、なかなか制御が難しくなりますが、あらかじめ適切な行動ができるように約束をしておきましょう。
メモや目につく私物にその約束を表記し、常に意識させるようにすることが大切です。
まとめ
一般の人の固執に比べ、明らかに病的なケースは高次脳機能障害を疑うべきです。新しいことを始めようとしても、その一部に固執しなかなか前に進められなくなったりしがちなので日常生活で問題となることが多いです。
新しいことを始める前には、合間合間で一息入れられるような目印やアラームなどを使い、気持ちを切り替える何かを作ってあげるようにしてください。